筆触 鉛筆のはなし


鉛筆がすっかり気に入ってしまった。

懐かしさと言ってしまえばそれまでだが、なにか魅かれるものがあるのだ。

 世の中にはいつの時代にも文房具好きという人種がいるもので、私もその端くれかもしれないが、随分文房具にお金を使ってきた。

なかでも筆記具というのは不思議なもので、ただ字や絵を書く道具にすぎないのだが、市場には数十円から中には数十万円のものまで様々な筆記具が売られている。極論は承知だが超高級と言っても、中味は一緒で外のデザインや素材の違いに過ぎない。

 

 そんな星の数ほどある筆記具の中で鉛筆はシンプルこの上ない、木製の軸にカーボンの芯、それだけだ。デザインといっても軸が丸か六角か、消しゴムの有無、仕上げの塗装ぐらいしか差別化の要素がない。他の筆記具との最大の違いは鉛筆は消耗品で使いきったら軸ともども消滅するということだろう。

 そんな鉛筆の魅力は何なのだろう。私の場合は「筆触」の一語につきる。

この筆記具と紙との接点の感触は他の筆記具とは明らかに違う。万年筆も好き、ボールペンも日々常用しているが、紙と筆記具の感触は全く異なるものだ。

 紙がつるつるでもざらざらでも、滑るように線が引ける。さらに、軽く、手にやさしい、面倒と紙一重だが削る楽しさもある、使ううちに鉛筆自体が短くなっていく、(筆記具のデザインのバランスが変化していく)。

なにより金属もプラスチックも使っていないので、地球に最も優しい筆記具である。

  変な鉛筆を見つけた。その名はブラックウイングという。

アメリカ製らしいが、カリフォルニア産のインセンスシーダーと日本製の高品質な芯を組み合わせた最高級の鉛筆を謳っている。一説によると生産は日本らしいが定かでない。

値段は一本約400円と鉛筆としてはベラボーな値段だが、私のようにデスクでメモをとったり、時折頭の中の整理をするとか、新たに発注予定の木地のイメージをフリーハンドで書いてみたりと結構使っている。 満足度は高い。

今日は朝日の中で鉛筆写経をやってみた。(写真)

 

昨年、この鉛筆のために一本たて(写真)というのを作った。堅木の直方体を漆で仕上げたものだが、筆記具を立てて置くというのはなにかと便利なことがわかって、昨年秋の展覧会に出品した。とても好評で用意したものは数日で売り切れてしまった。