一冊の本

 普段は禅の本と雑学の本が殆どだが、たまに本屋に立ち寄るといくつかの本を手に取ることもある。極論は承知だが、これはという本に出会うことは本当に稀なことで、売らんかなの本や中味を水増ししたような本の氾濫にただ驚くばかりだ。

 

 良書に合うのはますます難しくなっているような気がしている。私にとって本屋というのは情報の陳列屋さんで、良い本屋さんは店の主の思考が反映され、本屋ごとに個性があったものだ。そんな小さな本屋はどんどん少なくなっている。

 

やむなく本はネットで求めているが、これは半ば内容を想像して買うしかないのでいわば博打のようなものだ。

 漆芸家、赤木明登さんが「工芸とは何か」という新しい本を出した。赤城さんについては人気者なのであえてここで紹介することもあるまいと思うが、私にとっては昔楽しく一緒に仕事をした仲間でもある。なかなか多才な人で、近年はオーベルジュをやったり、小さな出版社を初めたり広く活躍している。いつも原点から発想できる数少ないプロデューサー工藝家だ。

その本8500円也と知って一瞬躊躇したが、震災の見舞いも兼ねてと思い購入した。

対談が主体の本なのでどこからでも読み始めることができる。たまらなく面白い。

対談も数多く読んだり体験したりしてきたが、出版物ともなると明らかに手が入って行儀よくまとめられてしまうのが通例だが、この対談は光景が目に浮かぶようにリアルなのだ。

直球のぶつかりあい、相手は不快になるのではというシーンもそのままに描き出されている。

すっかりつかまり、短時間で通読してしまたった。

 

みんな「美」と戦いながら輝いて生きている。なんと素晴らし人たちなのだろう。私にとっては久々に価値あるコンテンツとの出会いがなんとも嬉しい一冊である。

 

今年続編二冊が刊行予定とのこと、いまから楽しみだ。